Sakae Inamiya Art Gallery
Sakae Inamiya Gallery
女子美術大学卒業
彩栄会主宰
インフォメーションはありません
井波谷 栄へのお問い合わせは次のフォームをご利用ください。
作品名 | 薄明り |
---|---|
完成年 | 2003 |
解 説 | 丁寧な描写が風景の詩情を生み出す この作品も海を題材にしたものであるが、タイトルの通り「薄明リ」の海岸風景が描かれている。前頁作『茜の海』同様、微妙な光のニュアンスが表現されており、非常に難易度の高い挑戦を成功させている。 光の煌めきという爆発を抑えられたような「薄明り」の風景、光を溜め込むような、あるいは吸収してゆくような様子。明から暗、あるいは暗から明へと移行してゆく中間的な風景、光の状態、空気感を見事に描きだしているのである。空には月と共にカモメが飛び、ごつごつとした岩場には波が飛沫を上げる。空には無限の広がりを、波には活動性を、岩には硬さと重量感を与え、それぞれの個性と生命力が巧みに描き分けられている。風景全体が活き活きと描かれ、また風景の心情といったものも存分に捉えたものである。丁寧な描写を積み重ねることで、物理的再現のみならず、風景の詩情を大いに含んだ魅力的な作品となっている。 オーエン・ハント |
作品名 | 茜の海 |
---|---|
完成年 | 2007 |
解 説 | 茜色の海は、生命を象徴するように またとない瞬間、光と水と空と雲、それぞれの要素が輝きを放つ奇跡的ともいえる瞬間を捉えた作品である。このような風景に出会うと我々は心を奪われ、大自然と自分が繋がっていることを実感し、大自然の中の一部であることを思い起こす。日常では霞んでしまっている大切なことを、理屈ではなく体感させてくれるのである。井波谷栄氏の筆は、光の状態を繊細かつ大胆に描き出している。眩い華やかさを持ちながら、柔らかく包みこむような微妙なニュアンスの光。水面、波間に反射するもの、幾重もの雲に反射するもの、それぞれの光の状態を見事に描き分けている。その丁寧な観察眼と的確な表現力が、貴重な瞬間をカンヴァスに立ち上がらせるのである。この作品は、単なる「美しい風景」を超えた特別なものを感じさせるものであり、光は「生命」を象徴するように尊く描かれている。 オーエン・ハント |
作品名 | 収穫 |
---|---|
サイズ | F15 |
解 説 | 造型の理由 小さな鳥がいるでしょう、雀が三羽。 よく描く波の絵にも、そんな鳥をしばしば登場させ、画中に何か小さくても「命」を描き込むようにしています。 ただの風景画ではなく、情景の生命力、画中の「命」、思いや願い、暮らしの空気、常にそうしたモノを大切にして、「胸中」の素晴らしい景色を、記憶を手繰って描いています。 「収穫」は、幼い記憶を辿り今見ることが出来ない、失われつつある農村の情景を描きました。 陽光の角度を様々試し、農夫たちの影に表情をつけ、遣い昔に見た藁を燃す煙リのエ夫も加え、そこに確かに暮らす「命」があった事実を残す使命をどこかに感じて描きました。 この気持ちをこれからも大切にして描いていきたい。 |
作品名 | 山里の昼下がり |
---|---|
サイズ | F20 |
画 材 | カンヴァスに油彩 |
完成年 | 2004 |
解 説 | 透き通った空気感、明るい光、 深い奥行きの空間 明るい画面が印象的であり、光の表現に魅力がある作品である。また近景、中景、遠景へと視線を遠くへと導いてゆく力があり、深い奥行きをもった空間が描き出されている。透き通った空気感が画面には充満しており、爽やかな山里の昼下がりを見事に描き出している。日影にいる鳥、日向にいる犬など、小さなドラマを想像させる演出も効果的で、風景のみでなく、心の行き交う様子をも捉えているのが魅力的である。 マイケル・スタンレー |
作品名 | 抱かれて華やぐ |
---|---|
サイズ | F10 |
画 材 | カンヴァスに油彩 |
完成年 | 2001 |
解 説 | 卓越した色彩感覚、描写力、構成のアイデア 『抱かれて華やぐ』とは、詩的で素敵なタイトルである。文字どおり、ピンク、黄色、赤色の花々が、輝くように華やいでいる。心の中に明るい光を灯してくれるような温かい温度を持った作品である。これらの花の色彩が華やぐのは、背景の濃紺などの色彩に「抱かれて」いるからであり、両者の色彩のコントラストが非常に美しいのである。この紺色のエリアをよく見てみると、蝶の羽根のような姿をしている。そして面面右側には、白色のレース模様が構成され、さらに遥か彼方には雪を残した山脈が見えている。実に多様な要素が面面には構成され、様々なスケールの間を錯綜するような不思議な感覚がある。一見通常の静物面にみえるが、そう単純ではなく、シュールレアリズム的な要素も含んだ構成絵画といえるだろう。卓越した色彩感覚、描写力に加えて、構成のアイデアやセンスも素晴らしい秀作である。 パトリック・オベール |
作品名 | 晩秋 |
---|---|
サイズ | 53.0cm×65.2cm |
画 材 | 油彩、キャンバス |
完成年 | 2006 |
解 説 | 井波谷作品の特徴は複雑な技巧を濫用せず、本能から、そして彼女の本質の中から湧き起こる感情によって作品に向き合っている事である。自ら能力を強調し、芸術世界を征服しようという大きな野心よりも、簡潔で偽りのないものの中にこそ大きな価値がある事を我々に思い出させてくれる。 例えば、この作品では二頭の馬が巧妙に描かれており、情景の牧歌的な心地良さは観る者を感動させる。この作品が取り分け我々の精神を高揚させるのは、愛情の中の真実と価値観の共有である事を示しており、また、芸術は人間を高めるという事が、この芸術家が見付け出した存在の尊厳を表するモティーフである。今後も井波谷の制作を見守り続けたい。きっと優れた新しいイノベーションを提示し続けてくれる事だろう。そして、この書籍によって更にその作品が知られる事となり、国際的舞台で彼女の作品が求められる事が多くなるだろう。 アルフォンソ・ゴンサレス=カレーロ・ゴンサレス |
作品名 | 馬上のモナリザ |
---|---|
サイズ | 72.7cm×60.6cm |
画 材 | 油彩 キャンバス |
完成年 | 2007 |
解 説 | 馬上の人物を描写する文化は、様々な芸術家を魅了してきた。馬にまたがる王や女王、紳士や淑女は、美術史に於いて数多くの絵画のモティーフとなってきた。その一方で、歴史上の人物の肖像画を自身の新しい作品に取り入れる現代画家存在する。 芸術家・井波谷栄の本作品では、この芸術家が伝えたいメッセージや概念の非常に明確な帰結として、この双方の芸術的特性が同時に現れている。優しい微笑みを浮かべた『馬上のモナリザ』は、周囲の自然のみならずそこに生息する動物たちへも愛情を込めて眺めている。 この作品の和やかな面とモナリザの大胆な図像利用が対峙していると述べる者がいるなら、それは誇張ではない。なぜなら、そこには豊かな自然環境と共に有名な人物の甘美な魅力が表現されており、その両者が等しく暗示的で軽妙でもあるからだ。作品と鑑賞者の間に充分な緊張感を引き起こす事が、真の芸術作品を鑑賞する上では重要である。 アルフォンソ・ゴンサレス=カレーロ・ゴンサレス |