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クラウゼン(イタリア南チロル地方)スケッチ旅行 08・10・16

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 スケッチは光線の方向が大切だ。
 午前中は光線の条件を考慮して「見上げる」視点でポイントを探し2枚スケッチをする(スケッチ、水彩ペン カタログ7・8参照)。秋の太陽は移動が早い。ランチにじっくり時間を取っていると光線においていかれるのが分かっている。まだ正午前だったが早い目の食事を、とカフェでサンドイッチをほお張る。
 午後は来る時目にした風景を描こうと思い高速道路側の山、クラウゼンの村を流れるイザリ川に架かる橋を渡り山側に向かう。それほど高くはないが急坂の小道を10分ほどのぼるともう心臓が激しく波打つ。早く眺望できる場所につきたく気持ちのあせりもあって落ち葉の層に足を取られる体たらく。
 見晴らせるその場所は私が今まで見てきたフランス、イタリア、スイス、オーストリアの「昔ながらのヨーロッパ自然風景」の総決算であるかのような光景だった。
 もはや近くは陰となっていたが日の当たる村の全貌から背後に続く丘、更に遠くのやまから空へと舐めるように視線を動かす。ゆったりとしのびやかなここクラウゼンの空間に歴史に思いをはせているうちに、風景が「描くように」と誘っているような気がして体は震えた。と同時にペンは紙の上をもう走っていた。
 晩秋の風は汗ばんだ体に心地よかった。そして風で散らばり降る落ち葉の中に記念碑を発見する。その前にはプレイト。よく見ると銅版画のレプリカ。アルブレヒト・デューラーが1506年イタリア紀行の途中に立ち寄った記念碑とクラウゼンの風景を銅版画に制作したそのプレイトだと分かる。デューラーがクラウゼンの風景から感じた霊感を私も感じたようだ。
 スケッチが進むうち油彩での制作イメージが膨らむ。そして坂道でぱくついた心臓はまたもや踊る。思い切り、深々と深呼吸をして辺りの空気を吸い込み体の隅々に感動を沁み
こませた。
 帰国(2008.10.21)後、第30回個展出品のための制作に時間が充分ではなかったが、クラウゼンでの出会いが強烈だったのでF30はスムーズに筆は進み2週間で完成(カタログ油彩画 13・現場スケッチ 17  クラウゼンの眺め)。

 参考 アルブレヒト・デューラー<1471,5,21~1528,4,6 ドイツの画家、版画家、美術理論家。1505~07年ベネチアに滞在「ローゼンクランツ祝祭図」1506(プラハ国立美術館蔵)を制作、書簡を遺す。イタリア盛期ルネサンス美術の古典的人体美の理想を単なる模倣に陥ることなく完全にドイツ美術の伝統の中に生かした 新潮社、世界美術辞典による>

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